記憶はぼやけてしまうから

Exhibition

記憶はぼやけてしまうから

目の前に広がる景色をカメラに収める少女。この作品は、私たちの脳の中で「見る」という行為と「思い出す」という行為がいかに異なるのかを示した研究に基づいている。私たちが何かを見る時、視覚情報は脳の入り口から奥へと流れていき、その過程で少しずつ細部が整理されながら記憶として保存される。しかし研究によると、後でその光景を思い出す時、脳の中での情報の流れ方は全く異なるという。見る時には徐々に細部が失われていくのに対し、思い出す時にはそうではない。むしろ、最初からぼんやりとした「解像度」で記憶が呼び起こされるのだ。この作品は、私たちが目にした瞬間をそのままの鮮明さで取り出せない脳の特徴を象徴的に描いている。少女がカメラを手に取るのは、こうした記憶の限界を補うためかもしれない。しかし不思議なことに、私たちは大切な瞬間ほどカメラのファインダーから目を離して、自分の目でしっかりと見つめたくなる。それは、記憶のぼやけた「解像度」の中にこそ、写真では決して捉えられない豊かな何かが宿っているからなのかもしれない。

Inspired by

  • Favila, S. E et,al. (2022) Perception and memory have distinct spatial tuning properties in human visual cortex Nature Communications, 13(1), 5864

Credit

Illustration
Generative AI
企画/解説
浅井順也

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